お父さんとお母さんより
ただし、その安定には、いくつかの厳しい現実と、絶対に欠かせない条件がある。それは、
この土台の上に、しゅんの今の生活が成り立っているという事実だけは、どうか理解しておいてほしい。その上で、今回はしゅん自身の未来について、一緒に考えていきたいと思う。
このプランの最終目標は、若いうちに自由を満喫することではない。将来、特にお金のために働き続ける必要がない「経済的に自立した状態」を65歳頃に実現し、そこから先の人生を穏やかに、そして自分の価値観に従って生きていくための土台を築くことだ。
この方法で資産形成を続けると、65歳頃には資産が十分に育ち、年金と合わせて、経済的に自立した状態を達成できる可能性が非常に高くなる。この「経済的自立」とは、お金のために嫌な仕事を我慢する必要がなく、生活の選択肢が広がり、より穏やかな気持ちで日々を過ごせる状態のことだ。65歳時点での資産は、年率5%で成長したと仮定して、約3,417万円になることが期待できる。
「本当にそんなにお金が増えるの?」と思うかもしれない。この「年率5%」という数字は、ギャンブルのような当てずっぽうではなく、しっかりとした歴史と実績に基づいた、堅実な予測なんだ。
まず歴史について。投資先として考えているS&P500や全世界株式(オルカン)は、いわば世界経済のエースチームだ。彼らは過去数十年、戦争や経済危機を乗り越えながらも、平均すると年間7%以上成長してきたという歴史的な事実がある。
次に、お父さん自身の実績だ。これは机上の空論ではなく、実はお父さん自身が、同じ方法で資産形成を続けている。お父さんは2019年の2月から、毎月33,333円の積立投資を一日も休まずに続けてきた。この期間には世界中を混乱させたコロナショックの大暴落もあったが、ただコツコツと買い続けた結果、これまでに投資した元本約264万円に対し、現在の評価額は406万円を超えている(利益が142万円以上出ていることになる)。
計算すると、お父さんの実績は年率約9.8%になる。まさに「継続は力なり」だと実感している。
歴史的な平均(7%以上)と、お父さんの実績(約9.8%)。この両方と比べても、しゅんのプランで使っている「年率5%」という数字が、いかに堅実で達成可能な目標であるかが分かると思う。将来の計画を慎重に立てるために、あえて控えめな数字を使っているんだ。
このプランを成功させるためには、しゅんの人生において、絶対に守らなければならない2つの約束がある。これは単なる中間目標ではない。未来のしゅんが、笑っているか、それとも路頭に迷うかを分ける、人生の分岐点だ。これを『レッドライン』として、心に刻んでほしい。
30歳は、未来への積立投資を開始する最終デッドラインだ。もちろん、社会から長く離れた人間がいきなり安定収入を得るのは難しい。だから、20代のうちに、下のステップを少しずつクリアしていくことを目指してほしい。
下のグラフは、各Stepを達成するために必要な月収(棒グラフ)と、それを岐阜県の最低時給(1,065円)で稼ぐために必要な労働時間(折れ線グラフ)を示している。この表を見れば、最終目標であるStep 5でさえ、平日に1日3時間弱のアルバイトをするだけで達成可能な、決して非現実的な目標ではないことが分かると思う。
| Step | 必要月収 | 月の労働時間 | 週の労働時間(目安) | 1日の労働時間 (週5日勤務の場合) |
|---|---|---|---|---|
| Step 2 | 10,000円 | 約9.4時間 | 約2.2時間 | 約30分 |
| Step 3 | 30,000円 | 約28.2時間 | 約6.6時間 | 約1.3時間 |
| Step 4 | 35,000円 | 約32.9時間 | 約7.7時間 | 約1.5時間 |
| Step 5 | 65,000円 | 約61.0時間 | 約14.2時間 | 約2.8時間 |
これらのStepを30歳までに達成できれば、しゅんは人生の経済的安定に向けた35年間のマラソンを、予定通りにスタートできる。未来を築くための最も重要な要素である「時間」を最大限に味方につけられるんだ。もし達成できなければ、スタートが遅れるほど、未来の安定へと続く扉は、開ける前に固く閉ざされてしまうだろう。
約束:40歳になるまでに、どんな働き方でも構わないので、月10万円以上の安定した収入を得られる状態を作ること。
65歳頃に経済的な土台が完成したとして、そこからの生活は2つの収入源で支えられることになる。「国民年金」という土台と、「NISA資産」を運用しながら取り崩していく収入だ。ここでは、そのNISA資産の使い方について、3つのプランを提示する。
これは国が保証してくれる、生涯受け取れる収入だ。何歳になっても安定して月々約6.8万円が振り込まれる、生活の絶対的な土台になる。
ここがこの計画の最も賢い部分だ。65歳で築いた資産は、銀行に預けてただ切り崩すのではない。お金に働き続けてもらい(運用し続ける)、その利益と元本の一部を計画的に引き出して生活費にする。
どのプランを選ぶかで、毎月の生活費と、資産が何歳まで持つかが変わってくる。どの生き方が自分に合っているか、考えてみてほしい。
| プラン名(コンセプト) | ①NISAからの月収 | ②国民年金 | 合計月収 | 資産が尽きる年齢 |
|---|---|---|---|---|
| プランA(人生満喫) 100歳で使い切る |
約17.2万円 | 約6.8万円 | 約24.0万円 | 100歳 |
| プランB(バランス) 110歳で使い切る |
約15.9万円 | 約6.8万円 | 約22.7万円 | 110歳 |
| プランC(究極の安心) 資産を減らさない |
約14.2万円 | 約6.8万円 | 約21.0万円 | 尽きない |
この3つのプランは、あくまで代表的な例だ。もし「月々20万円で生活したい場合はどうなる?」「運用成績がもっと良かったら?」といった、より細かいシミュレーションをしたい場合は、「家族の未来資産シミュレーター」を使ってみてほしい。様々な条件で、自分の未来を試算することができる。
ここで、この計画の本質について、正直に伝えなければならないことがある。
まず理解してほしいのは、この計画がいわゆる「普通の生活」を送る多くの若者には、ほぼ不可能だということだ。しゅんがこの「クレバーな選択肢」を考えられるのは、しゅんが実家で生活を全面的に守られているからに他ならない。これは、とても恵まれた、特別なスタートラインなんだ。
逆に言えば、もしこの月々3万円の積立という、しゅんにできる唯一の準備を怠った場合、未来は非常に厳しくなる。
お父さんとお母さんが亡くなった時、しゅんは生きていくための経済的な手段を完全に失うことになる。さらに言えば、もし先にお父さんが亡くなり、お母さんと二人だけの生活になった場合、今の収入は維持できない。その時は、生活のために今住んでいるこの家を手放さなくてはならない可能性も出てくる。
これは、しゅんを脅すために言っているんじゃない。これが、私たちが必死に守ろうとしている日常の、すぐ隣にある現実なんだ。
このプランは、「しゅんが将来、お金に困らない生活を送るための土台を作ること」に特化している。逆に言えば、このプランを続ける限り、一般的に多くの人が経験するであろう、いくつかの大きなライフイベントは諦めることになるだろう。
例えば、「結婚して家族を持つこと」「子どもを育てること」「自分の家を建てること」、あるいは「仕事で成功して社会的な評価を得る」といった体験だ。それらの夢を実現するには、毎月3万円の積立を遥かに超える収入と責任が必要になるからだ。
このプランは、しゅんの将来の「経済的な安定」を盤石にするが、それは特定の生き方を選び、他の可能性を手放すことと引き換えになる、ということを理解しておく必要がある。
もちろん、正社員など他の道を選ぶなら心から応援する。ただ、どんな道でも積立NISAだけは早く始めてほしい。しゅんには『時間』という最強の武器があるからだ。焦らず、まずはゆっくり休んで自分のペースで考えてみてほしい。いつでも味方だ。