【もし明日、お父さんがバイク事故で死んだら】
残された家族が取るべき、お金の行動計画

お母さん、しゅんへ

これを読んでいるということは、お父さんの身に万が一のことが起きたのだと思います。悲しみの中で大変なときに、お金のことまで考えさせてしまうのは本当に心苦しい。でも、心配しないでください。経済的な準備はすべて整えてあります。

この家に住み続け、家族が穏やかに生活していくためのお金の土台は、お父さんが生きているよりも、むしろ強固になっています。

どうか、この手順書に沿って、一つひとつ、落ち着いて行動してください。必ず大丈夫です。

【重要】この計画の前提について

この手順書に書かれている極めて恵まれた経済状況は、ある特定の条件に基づいています。それは、お父さんの死因が「交通事故」であることです。共済金の額は死因によって変わるため、ここを正確に理解しておく必要があります。

どのケースでも生活の基盤は十分に守られますが、この手順書はお父さんにとって最も可能性が高いであろう「バイク事故」のケースに絞って記しています。

最初に:我が家の新しい経済状況

まず、今の我が家がどれだけ経済的に恵まれた状況にあるかを知ってください。お父さんの死によって、以下の資産が君たちのものになります。

残される金融資産の合計

約 2,406万円

(内訳:県民共済の死亡共済金 2,000万円 + お父さんのNISA資産 約406万円)

この金額は、お父さんとお母さんが二人で65歳まで働き続けて築こうとしていた目標額(1,800万円)を、現時点ではるかに上回っています。

この莫大な資産を土台に、安心して生活を再設計していくことができます。そのための具体的な行動計画を、以下にステップ・バイ-ステップで示します。


生活水準を維持したままの、新しい家計の収支

お父さんがいなくなっても、これまでの生活水準を一切変える必要はありません。お母さんが担当してくれていた食費や日用品の予算も、これまで通りです。しかも、これからはお母さんとしゅんの2人分になるので、同じ金額でも実際は今よりずっと余裕が生まれるはずです。その上で、家計がどうなるかを具体的に、そして詳細に示します。

大項目 項目 金額(月額) 備考
収入 お母さんの給与 + 100,000円 これまで通り働き続けた場合
遺族厚生年金(推計) + 107,042円 国から生涯受け取れる年金
収入合計 + 207,042円
支出 生活費(食費・日用品・お母さんのお小遣いなど) - 124,000円 今までと全く同じ金額です
電気代 - 21,750円 季節変動を考慮した平均額
水道・下水代 - 7,250円 2ヶ月毎の支払いを月割計算
灯油代 - 3,252円 冬期の年間費用を月割計算
インターネット(NURO光) - 5,551円 継続して必要です
NHK受信料 - 589円 2ヶ月毎の支払いを月割計算
Amazonプライム - 492円 年額5,900円を月割計算
社会保険料(国民健康保険・介護保険料) - 28,000円 お母さん自身の分(推計)
税金(固定資産税) - 9,483円 年額を12ヶ月で割った金額
その他保険料(火災保険・お母さんの県民共済) - 5,480円 必要な保障は継続します
車両費(車1台分の維持費積立) - 15,000円 バイクを処分し車1台になるため減額
はっちゃんの費用(ペット関連費) - 2,500円 年額30,000円を月割計算
自治会費 - 583円 年額7,000円を月割計算
しゅんのスマホ代 - 971円 お父さんの分は解約します
しゅんの美容院代 - 2,750円 2ヶ月毎5,500円を月割計算
しゅんの国民年金 - 17,510円 (しゅんが自立するまで)
支出合計 - 245,161円
月次収支(赤字額) - 38,119円

【この赤字は全く心配いりません】

一見、毎月約3.8万円の赤字に見えますが、このために「Step 4」で確保する「守りの現金650万円」があります。この現金を使えば、生活水準を一切変えずに、14年以上も余裕で生活できる計算です。その間、残りの1,700万円以上の資産は投資によってさらに増え続けるため、将来のお金の心配は完全に解消されます。


お母さんが取るべき5つの行動ステップ

Step 1:当面の生活費(現金)を確保する(最優先)

やること:お父さんの死亡を銀行に伝える前に、お父さんの財布にある現金と、ATMで引き出せる預金を全て手元に確保してください。

【なぜ?】

銀行は口座名義人の死亡を知った瞬間に、その口座を凍結します。そうなると、法的な相続手続きが終わるまで預金を引き出せなくなります。葬儀費用や日々の生活費に困らないよう、まず手元に現金を確保することが最も重要です。(出典: もしもの時の行動指針)

【引き出す口座について】
引き出す現金は、主に【⑧ 三菱UFJ銀行】に貯めている「生活防衛資金」を充ててください。この口座にはまとまった金額が貯蓄されているはずなので、まずここから必要な金額を引き出すことを検討してください。

Step 2:全ての借金をゼロにする

やること:住宅ローン(ソニー銀行)と、もし残っていれば車とバイクのローンを、保険金や売却代金で完済してください。

【なぜ?】

月々の大きな支出であるローン返済をなくすことで、家計が劇的に楽になります。特に住宅ローンがなくなるので、この家に安心して住み続けられます。(出典: 住宅ローンについて)

Step 3:公的なお金(遺族年金)の手続きをする

やること:岐阜南年金事務所に連絡し、「遺族厚生年金」の受け取り手続きを始めてください。

【なぜ?】

これは、お母さんの今後の生活を支えるための、国からの安定した収入源です。手続きをしないと受け取れないので、できるだけ早く連絡してください。(出典: もしもの時の行動指針)

【補足:遺族厚生年金(月額 約10.7万円)の内訳について】

この年金は、お父さんが会社員として厚生年金に加入していたことで、残された家族に支払われるものです。金額は、お父さんのこれまでの給与や加入期間に応じて決まります。内訳は、主に以下の2つの要素で構成されていると考えてください。

  1. 遺族厚生年金(本体部分):
    本来お父さんが将来受け取るはずだった老齢厚生年金(報酬比例部分: 年額917,604円)のおおよそ4分の3が、遺族年金として支払われます。これが年金の基本部分となります。(年額 約68.8万円)
  2. 中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん):
    これは、夫を亡くした40歳以上65歳未満の妻に対して、遺族厚生年金に上乗せされる特別な加算金です。お母さんはこの条件に当てはまるため、65歳になるまで、年額で約59.6万円(月額換算で約5.0万円)が加算される見込みです。

つまり、収入の欄に記載されている月額107,042円という金額は、上記1と2を合計したものです。65歳になるとこの「中高齢寡婦加算」は終了しますが、その代わりにお母さん自身の「老齢基礎年金」の受け取りが始まるため、収入が途切れることはありません。(出典:生涯生活設計プラン)

※ここに記載の金額はご提示いただいた「ねんきん定期便」の数値を元にした試算です。正確な金額は年金事務所での手続きの際に確認してください。

Step 4:資産を楽天証券で「守りながら増やす」仕組みを作る

やること:ここが最も重要です。お母さんは楽天証券に口座を持っているので、今後のお金の管理はすべて楽天証券にまとめます。手に入れた約2,406万円を、以下の通り分けて手続きを進めてください。

  1. 【守りの現金】650万円:
    これは今後10年以上の生活費の赤字補填用です。銀行の普通預金に入れておき、絶対に投資には回さないでください。
  2. 【攻めの投資】約1,756万円:
    まず、SBI証券に連絡し、お父さんのNISA資産(約406万円)の相続手続きを行います。資産は一度お母さん名義の「課税口座」に移されます。
    次に、お母さんが使っている楽天証券の「課税口座(特定口座)」に、共済金から①の現金を引いた残り(1,350万円)を入金します。そして、SBI証券から移管した相続資産と合わせ、S&P500などの投資信託で運用を開始します。
  3. 【非課税への移行】毎年360万円:
    楽天証券の課税口座にある資産を、毎年NISAの非課税枠(360万円)の上限まで、同じ楽天証券のNISA口座へ移し替えていきます。(約5年で完了します)

【なぜ?】

この戦略の目的は、「日々の生活は現金で守りつつ、大部分の資産はお母さんが使い慣れた楽天証券に集約して管理し、すぐに働き始めてもらう(長期運用を開始する)」ことです。相続した資産と保険金を楽天証券にまとめることで、管理がシンプルになります。NISAの年間上限があるため、一括では投資できませんが、まず課税口座で運用を始めることで、資産が大きく成長するチャンスを逃さずに済みます。この仕組みによって、シミュレーションが示す「資産が尽きるどころか、増え続ける」という状態を現実のものにできます。

Step 5:家計の整理と見直しを行う

やること:お父さん名義のクレジットカードや、不要になったサブスクリプションサービスを解約してください。

【なぜ?】

不要な支出をなくし、家計をシンプルにすることで、長期的な生活設計が立てやすくなります。詳細は「もしもの時の行動指針」と「我が家のキャッシュフロー」のページを確認してください。


【補足】税金について(心配しないでください)

大きなお金が動くので、税金のことが心配になるかもしれません。でも、結論から言うと、この計画で税金の心配はほとんどありません。分かりやすく説明します。

① 相続税について

結論:相続税はかかりません。

理由は2つあります。

【まとめ】

二重の備えがあるため、相続税の申告や支払いの心配は一切不要です。

② 翌年からの所得税・住民税について

結論:税金の負担が急に増えることはなく、むしろ今より軽くなる可能性があります。

お父さんがいなくなった後のお母さんの収入と、それぞれにかかる税金は以下のようになります。

収入の種類 税金がかかるか? 備考
お母さんの給与 かかります 今まで通りです。ただし、「寡婦控除」という制度が使えるので、税金の負担は今より少し軽くなるはずです。
遺族厚生年金 かかりません(非課税) これが一番のポイントです。年間112万円ほど受け取りますが、この収入によって税金が増えることは一切ありません。
死亡共済金・相続した財産 かかりません これらは「所得」ではないため、所得税・住民税の対象外です。

【まとめ】

収入の柱である遺族年金が非課税なので、安心してください。将来、投資で大きな利益が出た場合はその利益に対して税金がかかりますが、それはまた別の話です。

最後に

これらのステップを終えれば、君たちの未来には、もうお金の心配は一切ありません。お父さんが人生をかけて築きたかった家族の経済的安定は、皮肉にも、この形で完成しました。

この安心を土台に、どうか二人で支え合い、穏やかに前を向いて生きていってください。

今まで本当にありがとう。